雑学・話題2025.05.14 最終更新日:2025.05.28
「大字」と「小字」とは?地名の基本をやさしく解説

大字と小字とは?その歴史と役割について
地名には、さまざまな由来や歴史が込められています。その中でも「大字(おおあざ)」と「小字(こあざ)」という名称は、地域の歴史を理解する上で重要な役割を果たしています。本記事では、大字と小字の違いや、それぞれの成り立ち、そして現代における役割について解説していきます。
大字とは?
大字とは、小字の集合体であり、明治22年(1889)に施行された市制・町村制による「明治の大合併」によって生まれました。それまでの江戸時代における「郷」や「村」の名称が、大字として引き継がれる形となりました。
この制度改革により、それまで数多く存在していた小規模な村落が統合され、新たな行政単位として大字が設定されました。こうした背景から、大字は現在も地域の基礎的な単位として、住所表記などに用いられることが多くあります。
小字とは?
小字とは、大字よりも小規模な集落や土地のまとまりを指し、それぞれの地域に根付いた地名の一種です。小字研究の第一人者である桑原公徳氏によれば、一つの小字の広さはおおよそ1町から2町(約1万㎡~2万㎡)とされています。
小字は、かつての土地の利用状況や自然地形、あるいは歴史的な出来事などを反映して命名されることが多く、その土地の特性を表す重要な要素となっています。しかし、明治時代以降の地名改称や土地区画整理、町村合併により、多くの小字が公式な地名としては姿を消しました。
小字の持つ歴史的価値
小字には、単なる地名以上の価値があります。古代から近代にかけての遺跡や遺構を示す名称が多く含まれており、地域の歴史や文化を知る手がかりとなる貴重な資料とされています。例えば、「谷地(やち)」は湿地や谷あいであったことや、「堀ノ内(ほりのうち)」はかつて城郭があったことを示唆するものが含まれています。
また、江戸時代以前から受け継がれてきた名称も多く、そこからその地域の産業や人々の暮らしの変遷を知ることができます。
現代における小字の役割
現在では、公式な地名としての小字は減少しましたが、いまだにその名残を見ることができます。例えば、公園名、自治会や公民館の名称、バス停名などに使用されていることがあります。
また、歴史研究や郷土資料としての価値も高く、地域の歴史を知る上で重要な手がかりとなっています。
小字の調べ方
小字を調べる方法はいくつかあります。以下のような資料を活用することで、かつての小字名やその由来を知ることができます。
- 旧土地台帳や不動産登記簿の取得
旧土地台帳や不動産登記簿には、過去の地名や地番が記録されていることがあり、小字の情報を確認する手がかりになります。 - 関東小字地図の閲覧(https://koaza.net/maps/)
有志の方が作成した関東地方の小字地図です。関東地域に限定されますが、詳細な情報が得られる貴重な資料です。 - eMAFF農地ナビの活用(https://map.maff.go.jp/)
農地に関する情報を提供する地図サービスで、小字の名称が記載されている場合があります。農地に限定される点には注意が必要です。 - 郷土史の閲覧
郷土史には、明治6年(1873年)の地租改正に伴い作成された「字限図」や、小字一覧表が掲載されていることがあります。地域の図書館や歴史資料館で閲覧できることが多いです。
まとめ
大字と小字は、日本の地名制度の中で重要な役割を担い、地域の歴史や文化と深く結びついています。明治時代の合併により大字が生まれ、小字の多くは姿を消しましたが、いまなお地名や公共施設の名称にその名残をとどめています。
これらの地名を知ることで、私たちは自分たちが暮らす地域の成り立ちや、歴史的背景をより深く理解することができます。
この記事を書いた人

執筆者:土地物語