日本の歴史2026.09.11 最終更新日:2026.09.11
登記簿でたどる土地の歴史ー現代から明治へ遡る4つの公的資料
「土地の歴史を調べる」と聞くと、古文書の解読や遺跡の発掘のような、専門家だけの世界を思い浮かべるかもしれません。しかし実は、誰でも法務局で取り寄せられる公的な記録から、その土地に「誰がいて、どう使われていたか」をたどることができます。
鍵になる資料は4つ。登記事項証明書、閉鎖登記簿、旧土地台帳、和紙公図(旧公図)です。新しい資料から古い資料へと順にさかのぼっていくと、時間を現代から明治期まで巻き戻すことができます。この記事では、土地歴史調査を専門とする弊社が、4つの資料の性格と取り寄せ方、そして実際の土地でどこまで分かるのかを、実例とともにご紹介します。
1.そもそも「登記簿」とは何か
登記簿とは、土地や建物について「どこにあり、どんな広さで、どんな使われ方をしていて、誰のものか」を国が公的に記録した帳簿です。1筆(いっぴつ=土地の登記上の単位)ごとに1枚の記録が作られ、大きく2つの部分に分かれています。
表題部
- 土地そのものの物理的な情報。所在、地番(土地につけられた番号)、地目(ちもく=田・畑・宅地といった土地の種類)、地積(ちせき=面積)が載ります。
権利部
- 権利に関する情報。所有者の移り変わり(甲区)と、抵当権など所有権以外の権利(乙区)が載ります。
かつては紙の帳簿(登記簿)を写した「登記簿謄本」が交付されていましたが、平成期にコンピュータ化され、現在は「登記事項証明書」という名前で交付されています。重要なのは、この記録が所有者本人でなくても、誰でも手数料を払えば取得できるということです。
そして「土地の歴史をたどる」とは、この記録を新しいものから古いものへ、順にさかのぼっていく作業にほかなりません。次章で、その道筋を4つの資料に沿って見ていきましょう。
2.4つの資料で、現代から明治へさかのぼる
4つの資料は、それぞれカバーする時代が異なります。おおまかに言えば、登記事項証明書が「現在」、閉鎖登記簿が「昭和〜平成」、旧土地台帳が「明治〜昭和30年代」、和紙公図が「明治の土地のかたち」を伝えてくれます。以下で順に見ていきましょう。
資料① 登記事項証明書――いま現在の記録
登記事項証明書とは
現在有効な登記情報です。土地の所在・地番・地目・地積と、現在の所有者、抵当権などが記載されています。
何が分かるか
今この土地が誰のもので、どんな種類(地目)の土地として登記されているか。また、コンピュータ化の際に引き継がれた範囲で、過去の所有者の移り変わりも載っています。
取得方法
全国どこの法務局でも取得できます。窓口請求のほか、オンラインでの交付請求も可能で、手数料は窓口600円、オンライン請求なら520円(郵送受取)または490円(窓口受取)と、オンラインの方が安く済みます(出典:法務省「登記手数料について」、令和7年4月1日現在)。証明文のない閲覧用データでよければ、「登記情報提供サービス」で1件330円からパソコン画面上でも確認できます。
資料の限界
登記簿がコンピュータ化された際、その時点で効力のある情報だけが新しい記録に移されました(記録の末尾などに「移記」と書かれているのがその印です)。つまり、それより古い情報はこの証明書には載っていません。そこで次の資料の出番です。
資料② 閉鎖登記簿――ひとつ前の段階の記録
閉鎖登記簿とは
合筆(土地をまとめること)や滅失、そしてコンピュータ化にともなって現在の登記簿から外され、別途保管されている過去の登記簿です。手書きの縦書きで、和紙に墨で書かれたページがそのまま綴じられています。
何が分かるか
コンピュータ化前の所有者の変遷や、その土地が過去にどう分けられ、まとめられてきたか。古いものでは明治30年代、旧不動産登記法(明治32年(1899)施行)の時代までさかのぼる記録が残っていることもあります。
取得方法
法務局の「登記事項証明書・登記簿謄本抄本交付申請書」にある「合筆、滅失などによる閉鎖登記簿・記録」の欄にチェックを入れて請求します。手数料は登記事項証明書と同じ扱いで、土地1筆ごとに600円(窓口請求の場合)です。
注意点
閉鎖登記簿には保存期間があります。現在の規定では土地は閉鎖から50年、建物は30年です(不動産登記規則第28条)。しかも、昭和63年(1988)より前に閉鎖されたものは保存期間が20年と短かった経緯があり、古い閉鎖登記簿はすでに廃棄されている場合があります。古い土地ほど、早めに取得しておくことが重要です。
資料③ 旧土地台帳――明治からの記録
旧土地台帳とは
明治期に、税金(地租)を課すために作られた課税台帳です。登記簿が「権利を守るための帳簿」なら、土地台帳は「税を取るための帳簿」。ルーツが違う2系統の記録が長く並走し、昭和35年(1960)に登記簿へ一本化(登記簿・台帳の一元化)されて役目を終えました。閉鎖された台帳は現在「旧土地台帳」として法務局に保管されています。
旧土地台帳の沿革
明治22年(1889)の土地台帳規則により、それまでの地券制度に代わって地租の記録が土地台帳に一本化されました。当初は税務署(税務官署)が管理していましたが、昭和25年(1950)、シャウプ勧告を受けて地租が廃止され市町村の固定資産税に変わったことにともない、同年7月31日、台帳は附属地図とともに税務署から登記所(法務局)へ移管されました(出典:新井克美『Q&A詳解 土地台帳』日本加除出版、2022年)。
何が分かるか
明治中期から昭和30年代までの所有者の変遷、地目、地積、そして税額です。旧土地台帳の紙面は罫線で区切られた表になっていて、各欄が次のことを教えてくれます。
- ①【字(あざ)・地番】
- 当時の地名と土地の番号。町名変更や区画整理で現在と違う場合があり、地名の歴史そのものが刻まれています。
- ②【地目】
- 田・畑・宅地・山林・原野・池沼など。地目が変わると「沿革欄」に届出の旨が書かれ、次の行に新しい地目が記されるので、土地の使われ方の変化が行を追って読めます。
- ③【地積】
- 土地の面積のことです。単位は平方メートルではなく、反(たん)・畝(せ)・歩(ぶ)や坪。分筆・合筆のたびに数字が動きます。6尺(1間=1.8メートル)平方を1坪(歩)といいます。30歩で1畝(せ)となり、10畝で一反(たん)、10反で1町(ちょう)です。
- ④【地価・賃貸価格・地租】
- 税額の計算根拠です。地租の課税標準は当初「地価」でしたが、昭和6年(1931)の地租法で「賃貸価格」(その土地を貸したらいくらになるかという評価額)に改められました。数字の変遷から、その土地が当時どう評価されていたかがうかがえます。
- ⑤【沿革欄】
- 分筆・合筆、地目変換、開墾、道路になった(道路成)等の経緯が書き込まれる、いわば土地の日記帳です。戦災で税を免除した印など、時代の出来事が刻まれていることもあります。
- ⑥【所有者欄】
- 所有者の住所・氏名。実は当時の実務では、所有者の住所が土地の所在と同じ場合、住所の記載を省略してよい取り扱いでした。住所欄が省略されていたら、所有者がその土地(その村・その町)に住んでいたことの傍証になるのです(出典:前掲『Q&A詳解 土地台帳』)。
取得方法
専用の申請書はありません。登記事項証明書の交付申請書の余白に「旧土地台帳の写しを請求します」と書き添えて、その土地を管轄する法務局に請求します。そして特筆すべきことに、手数料は無料です。土地台帳法は昭和35年(1960)に廃止されましたが、台帳は当分の間保管され、閲覧・写しの交付は従前どおり、手数料を徴収しない取り扱いが続いているためです(昭和36年民事甲第534号民事局長通達。出典:前掲『Q&A詳解 土地台帳』)。郵送請求もできます(返信用封筒を同封)。地名が変わっている場合は、分かる範囲で旧地名を併記しておくとスムーズです。
旧土地台帳の附属地図として作られたのが、次の和紙公図です。台帳と地図をセットでそろえると、記録と場所がつながります。
資料④ 和紙公図(旧公図)――土地のかたちと位置
和紙公図とは
明治の地租改正(明治6年(1873)〜)で作られた「字限図(あざきりず)」「改租図」をルーツとする、旧土地台帳の附属地図です。図面は和紙→マイラー(ポリエステルフィルム。昭和40年代に転写)→デジタルデータと書き換えられてきました。書き換え前の和紙・マイラー版が「旧公図」と呼ばれます。
和紙公図の沿革
地租改正では村民自身が一筆ごとに測量して「改租図」を作り、その不備を補うために明治18年(1885)からの全国的な地押調査(じおしちょうさ)で「更正図」が作られました。現在の登記所に備わる公図の多くは、このいずれかの系譜を引いています。土地に一筆ごとの番号=地番が振られたのも、このときが起源です(出典:国土交通省 地籍整備課「明治以降の地籍と地図の歴史」)。
何が分かるか
当時の土地の区画、地番の並び、道路や水路との位置関係です。古い公図では道が赤、水路が青に塗り分けられていることがあり(いわゆる赤道・青道)、台帳でたどった地番が「どこ」にあったのかを地図上で確かめられます。
注意点
測量技術が未熟な時代の図面のため、距離・角度・面積は正確ではありません(交付される写しにも「地図に準ずる図面」と明記されます)。一方で、隣接地との位置関係や、境界が直線か曲線かといった定性的な情報は比較的信用できます。位置と区画の概略をつかむ資料、と割り切って使いましょう。
取得方法
現在のデータ化された公図は全国どこの法務局でも取得でき、手数料は窓口500円、オンライン請求なら470円(郵送受取)または440円(窓口受取)。登記情報提供サービスなら1件360円で閲覧できます。ただし、書き換え前の和紙・マイラーの旧公図は、その不動産を管轄する登記所(法務局)でのみ取得・閲覧できます。ここだけは「どこでも取れる」が通用しないので注意してください。
3.実際にたどってみる――東京・千代田区三番町のある土地
それでは、筆者が実際に調査した土地で、4つの資料を順に読んでみましょう。場所は東京都千代田区三番町、弊社が位置する1筆の土地です。現在はオフィスビルが建っています。
3.1. 登記事項証明書(資料①)
表題部には、地目「宅地」、地積「332.13平方メートル」とあります。権利部(甲区)の1番には、昭和19年(1944)1月12日受付、原因「昭和3年(1928)7月31日家督相続」として、この土地を所有する方の名前が載っています。その後、平成の贈与・相続を経て、平成25年(2013)に売買で法人の手に渡り、2度の売買をはさんで、令和6年(2024)から現在の所有会社に至ります。1枚の証明書から、個人の邸宅の土地が平成の末に法人所有のビル用地へ変わったという大きな流れが読み取れました。しかし昭和19年より前は書かれていません。ここで資料②へ。
3.2. 閉鎖登記簿(資料②)
閉鎖登記簿を請求すると、墨書きの縦書きで綴られた明治期からの記録が出てきました。そこには、この土地の所在がかつて「東京市麹町区上六番町」と呼ばれていたこと、昭和8年(1933)の町名整理で「三番町」に変わり地番も改められたこと(事実)が書かれています。甲区には明治・大正期の複数の個人の名前が並び、売買や相続で土地が受け継がれ、昭和初期に個人へ渡ったことが分かります。乙区には明治期の抵当権設定の記録もあり、当時の所有者が銀行から融資を受けていたこと、つまりこの土地が担保価値のある資産だったことがうかがえます。
3.3. 旧土地台帳(資料③)
旧土地台帳には、税の帳簿ならではの情報が詰まっていました。地目は一貫して「宅地」、地積は約129坪から始まり、区画の整理を経て100坪47(約332平方メートル)へ――現在の登記面積とぴったりつながります。そして沿革欄には、戦時災害国税減免法により地租を免除した旨の印が押されていました。この一帯は昭和20年(1945)の空襲で被災しており、この土地の家屋も戦災に遭った可能性が高いと考えられます。税の記録に、戦争の爪痕が残っていたのです。
3.4. 和紙公図(資料④)
和紙公図では、「九段」と大書された通り沿いに、整然と区画された武家地由来の街区が広がり、その中に当該地番の区画を見つけることができました。台帳で数字として追ってきた土地が、地図の上で「かたち」を持つ瞬間です。なお交付された写しには「地図に準ずる図面」であることと、所在が現在は「九段南2丁目・三番町」に変更されている旨が明記されていました。
4つの資料を重ねると、こんな物語が立ち上がります。武家地の記憶を残す1筆の宅地が、明治・大正の個人所有者を経て昭和初期に個人の住まいとなり、戦災をくぐり抜け、戦後も半世紀にわたって同じ家に受け継がれ、平成の末にオフィスビルの敷地へと姿を変えた――。築年数の浅いビルの足元に、150年分の来歴が層になって眠っていました。
4.自分の土地でやってみる――手順とつまずきポイント
最後に、ご自身の土地(お住まいのマンションやご実家の土地)で調べる場合の手順をまとめます。
出発点は「地番」を調べることです。普段使っている住所(住居表示)と、登記上の地番は別物です。ブルーマップ(住居表示と地番を重ねて記載した地図。大きな図書館にあります)で対応を確認するか、管轄の法務局に電話で照会すれば教えてもらえます。
取得の順番は、この記事でたどったとおりです。
1.現在の登記事項証明書を取る(全国どこの法務局でも可)
2.閉鎖登記簿を請求する(交付申請書のチェック欄を使用)
3.旧土地台帳の写しを請求する(申請書余白に記入・無料)
4.旧公図(和紙公図)を管轄登記所で請求する
手数料の目安は次のとおりです(令和7年(2025)4月1日改定。出典:法務省「登記手数料について」)。
|
資料 |
窓口請求 |
オンライン請求 |
備考 |
|
登記事項証明書 |
600円 |
520円(郵送受取)/490円(窓口受取) |
全国どの法務局でも可 |
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閉鎖登記簿の謄本 |
600円 |
― |
土地1筆・建物1個ごと |
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旧土地台帳の写し |
無料 |
― |
郵送請求可。管轄法務局へ |
|
公図(現在のデータ公図) |
500円 |
470円(郵送受取)/440円(窓口受取) |
旧公図(和紙・マイラー)は管轄登記所のみ |
参考までに、証明文のない閲覧用でよければ「登記情報提供サービス」(全部事項330円・地図360円)も便利です。
最後に、実際の調査でつまずきやすい5つのポイントを挙げておきます。
①旧字・くずし字……閉鎖登記簿と旧土地台帳は手書きです。読めない字は無理に判読せず、前後の欄や他の資料と突き合わせましょう。
②地番の枝番・分筆合筆……「24番14」のような枝番は、親番の土地が分かれた歴史の証拠です。さかのぼる途中で地番が変わったら、分筆・合筆の記載を手がかりに前の地番を特定します。
③町名・地名の変更……三番町の例のように、旧町名時代の記録は旧地名で綴られています。請求時に旧地名を併記すると探してもらいやすくなります。
④旧公図は管轄登記所でしか取れない……遠方の場合は郵送請求や、まずデータ公図・登記情報提供サービスで概要をつかむ方法もあります。
⑤閉鎖登記簿は廃棄済みのことがある……保存期間の項で述べたとおりです。残っているうちに取る、が鉄則です。
これらの4つの資料でたどれるのは「明治以降」
ここまでの4資料でたどれるのは、主に明治期以降の所有と利用です。それは近代的な土地記録の出発点が明治6年(1873)の地租改正だからです。江戸時代、その土地が誰の屋敷でどんな村だったのか。中世や古代にまで視野を広げるとどうなるのか。それを知る手がかりは、地名の由来を集めた「地名辞典」や、自治体が編さんした「郷土誌・自治体史」にあります。これらの解説は今後の記事で詳しくご紹介していきますので、ぜひチェックしてみてください。
5.まとめ
登記事項証明書から閉鎖登記簿、旧土地台帳、和紙公図へ。4つの資料は、専門家でなくても土地の来歴をたどれる、もっとも手近な入り口です。手数料は4資料あわせても2,000円足らず(旧土地台帳にいたっては無料)。それだけで、足元の土地の150年が手に入ります。
あなたの土地には、誰がいて、どんなふうに使われていたのでしょうか。その答えは、法務局の書庫で静かに待っています。
6.参考資料・出典
・法務省「登記手数料について」
・法務局「登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です」
・登記情報提供サービス
・国土交通省 土地・建設産業局 地籍整備課「明治以降の地籍と地図の歴史」
・新井克美『Q&A詳解 土地台帳――表示登記・筆界特定・所有者調査のための知識』(日本加除出版、2022年)
・家樹株式会社「【解説】旧土地台帳の読み方・閲覧方法」
この記事を書いた人
執筆者:土地物語