国立国会図書館・地図室の利用ガイド

東京都千代田区永田町にある国立国会図書館（National Diet Library、略称NDL）は、国会に属する唯一の国立図書館として、膨大な蔵書とともに国民の知的探究を支えています。その中でも東京本館の4階に位置する地図室は、明治時代以降の国内外の地図資料を体系的に収集・保存し、研究者はもとより、地図に関心のある一般利用者にも広く開かれています。

今回は、国立国会図書館・地図室の所蔵資料や利用方法などを紹介していきます。

豊富な所蔵資料

国立国会図書館・地図室の最大の特徴は、その圧倒的な資料数と種類にあります。地図室が所蔵する一枚ものの地図は、国内外を合わせて約51万枚。国土地理院が発行した地形図や地勢図、旧日本陸軍による外邦図（戦前の海外植民地・占領地図）など、地理学や歴史研究において欠かせない資料が揃っています。

また、都市計画や地域研究に役立つ住宅地図も充実しており、日本全国の主要都市をカバーする約8万冊が所蔵されています。住宅地図には、丁目・番地ごとの建物名称や商業施設、公共施設が詳細に記されており、過去の街の様子を知る上で非常に貴重な手がかりとなります。

さらに、地図帳や世界各国の地図、戦前の地質図や海図など、地図室には実に多種多様な地図が所蔵されています。江戸期以前の古地図の原本などは本館３階の古典籍資料室に所蔵されています。

利用の手順

地図室を利用するには、まず国立国会図書館に来館し、利用者登録を行う必要があります。登録が済めば誰でも無料で地図室の資料を閲覧することが可能です。

地図室では、最新の住宅地図や地番が記載されたブルーマップ、参考図書などが開架（自由に手に取れる）されており、これらの資料は地図室内で自由に閲覧できます。一方で、一枚ものの古地図や過去の住宅地図などは書庫に収蔵されており、利用には資料請求が必要です。資料は館内に設置されている端末（NDLサーチ）から、1回につき5点まで請求可能で、職員によって資料が出納されます。

資料は原則として地図室内での閲覧のみで、複写申込の場合を除き持ち出しはできません。また、複写を希望する場合には、著作権法の範囲内で複写申込書を提出し、館内の複写サービスを利用することになります。古地図や一部の貴重資料は複写が制限される場合があるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

デジタル時代への対応

国立国会図書館は、地図資料のデジタル化にも積極的に取り組んでおり、「国立国会図書館デジタルコレクション」では一部の地図資料をインターネット上で閲覧できるようになっています。特に戦前の地形図や外邦図の一部は、高解像度でデジタル化されており、全国どこからでもアクセス可能です。

ただし、著作権や資料の性質によっては「国立国会図書館内限定公開」の扱いとなっているものもあります。このような場合には来館して専用端末で閲覧する必要がありますが、それでもデジタル化によってより手軽に資料へアクセスできるようになった点は、利用者にとって大きな利点といえるでしょう。

地図室の活用

国立国会図書館・地図室は、研究者だけでなく、一般の利用者にとっても貴重な情報源となっています。たとえば、家系調査をしている人が、祖父母の住んでいた地域の戦前の住宅地図を調べることで、当時の生活環境や周辺施設の様子を知ることができます。また、地元の歴史に関心を持つ市民が、地形図の変遷を通じて町の発展や自然環境の変化を読み解くこともあります。

さらに、都市計画や建築設計に関わる専門家にとっても、過去の地図は重要な手がかりになります。地盤や過去の地形、水路の変化などを地図から読み解くことで、安全な都市づくりに役立てることができるのです。

まとめ

国立国会図書館の地図室は、ただ地図を集めた場所ではありません。そこには過去から現在、そして未来へとつながる知の断片が静かに眠っています。研究のために、趣味として、あるいは自分自身のルーツを探る旅の一環として国立国会図書館・地図室は、すべての知的探求者にとって開かれた場所です。ぜひ一度、その知の空間を訪れてみてはいかがでしょうか。

参考

国立国会図書館「地図室」https://www.ndl.go.jp/jp/tokyo/map/index.html　2025/04/18最終閲覧
「地図室案内及び室内配置図」https://www.ndl.go.jp/jp/tokyo/map/pdf/chizu.pdf　2025/04/18最終閲覧
国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/ 2025/04/18最終閲覧